予約を受ける店舗にとって、キャンセルは歓迎したいものではありません。

特に当日のキャンセルや無断キャンセルでは、その時間を別のお客様に提供できず、予約枠そのものが失われてしまうことがあります。

このため、「どうすればキャンセルを減らせるか」と考えるのは自然です。

ですが、少し視点を変えてみるとどうなるでしょうか。

前日に「行けなくなりました」と連絡してくれた人と、何も連絡せず当日来なかった人。

どちらも予約した人が来店しなかったことに変わりはありません。

しかし、店舗にとってこの二つは、本当に同じなのでしょうか。

予約したときの予定が、そのままとは限らない

予約とは、現在の自分が未来の行動を決めることでもあります。

予約したときには、もちろん行くつもりだった。

ところが予約日までの間に、仕事が入るかもしれない。体調を崩すかもしれない。家族の予定が入るかもしれない。あるいは、予約したこと自体を忘れてしまうかもしれません。

予約した人の事情が、その後も変わらないことを前提にはできません。

だとすれば、一定のキャンセルが発生すること自体を完全になくすのは難しいとも考えられます。

キャンセルと無断キャンセルは、同じではない

たとえば、明日の15時に予約が入っているとします。

前日にキャンセルの連絡があれば、15時の予約枠が空いたことが分かります。

別のお客様から予約が入るかもしれません。キャンセル待ちの人へ案内できるかもしれません。スタッフの予定を調整できる場合もあります。

一方、何も連絡がないまま15時になっても来店しなければ、それまで予約枠は塞がったままです。

結果としては、どちらも「来店しなかった」。

しかし店舗が受ける影響は同じではありません。

ここで考えたいのは、

店舗にとって本当に減らしたいものは、キャンセルそのものなのか。

ということです。

「来られないならキャンセルする」とは限らない

予約のキャンセルに関する研究には、興味深いものがあります。

医療機関の予約リマインダーについて調べたシステマティックレビューでは、リマインダーには来院を促す効果だけでなく、来院できない人のキャンセルや予約変更を促す場合があることが報告されています。

電話によるリマインダーを受けた人のキャンセル・変更が増え、その結果、空いた予約枠の一部を別の患者へ再配分できた研究もありました。

さらに同じレビューでは、キャンセルしようと思っていても、電話がつながらない、長く待たされるといった手続き上の問題によって、実際のキャンセルまで至らないケースも報告されています。

もちろん、これは主に医療機関を対象とした研究です。

美容室やサロンなどの予約に、その結果をそのまま当てはめることはできません。

それでも、

「来られない人は当然キャンセルしてくれる」とは限らない。

という人の行動を考える材料にはなりそうです。

キャンセルしやすくしたら、キャンセルが増える?

では、WebやLINEから簡単にキャンセルできるようにしたらどうでしょう。

「そんなことをしたら、かえってキャンセルが増えるのではないか」

という心配も当然あります。

実際、キャンセルするための手間を減らせば、記録上のキャンセル件数が増える可能性はあります。

しかし、そこで「キャンセルが増えたから悪化した」と判断してよいのでしょうか。

たとえば、こんなケースを考えてみます。

変更前には、事前キャンセルが5件、無断キャンセルが5件あった。

仕組みを変えた後、事前キャンセルが8件、無断キャンセルが2件になった。

キャンセル件数だけを見ると、5件から8件に増えています。

ところが、店舗が事前に把握できなかった予約枠は、5件から2件に減っています。

もし空いた3枠に別のお客様の予約が入れば、店舗にとってはむしろ改善です。

「キャンセルを減らすこと」と「使われない予約枠を減らすこと」は、同じではありません。

リマインドは、来店を促すだけの機能ではない

予約システムには、予約日の前日にLINEやメールなどで通知するリマインド機能があることも多いです。

一般には、

予約を思い出す → 忘れずに来店する

ための機能だと考えます。

実際、医療予約を対象とした複数の研究では、リマインダーによって予約への出席率が改善し、無断で来なかった割合が低下する傾向が確認されています。

しかし、リマインドにはもう一つの働きがあります。

予約を思い出す → 「そういえば明日は行けない」と気づく → 予約を変更・キャンセルする

という行動です。

そう考えると、リマインドは単に「忘れないための機能」ではなく、

その予約を本当に履行できるか、利用者にもう一度確認してもらう機会

とも捉えられます。

キャンセル機能は「予約枠を返してもらう仕組み」

キャンセル機能というと、お客様が予約を取り消すための機能に見えます。

店舗からすれば、できれば使ってほしくない機能に見えるかもしれません。

しかし、見方を変えることもできます。

来店できなくなったお客様から、

できるだけ早く予約枠を返してもらうための仕組み。

そう考えると、キャンセル機能の意味は少し変わります。

キャンセルさせないために手続きを難しくすることが、必ずしも店舗にとって良いとは限りません。場合によっては無断キャンセルを誘発するかもしれません。

事情が変わって来店できなくなった人がいるなら、店舗にとって重要なのは、その事実をできるだけ早く知ることかもしれません。

予約導線は、予約完了で終わるのか

Webサイトから予約ページへ進み、日時を選び、予約を完了する。

通常、予約導線を考えるときには、ここまでに目が向きます。

しかし、店舗が本当に求めているのは「予約完了」というデータではありません。

実際にお客様に来店してもらい、サービスを提供することです。

だとすれば、

  1. 予約する
  2. 予約日まで時間が経つ
  3. リマインドする
  4. 来店できるか確認する
  5. 来店する/変更する/キャンセルする
  6. キャンセルされた予約枠を再び開放する

ここまでを一つの流れとして考えてもよいのではないでしょうか。

キャンセルさせないことが目的ではない

キャンセルしやすい予約システムにすれば、無断キャンセルが必ず減る。

そこまで単純なことは、現時点の研究からは言えません。

利用者やサービスの種類によっても行動は変わるでしょう。

ただ、予約した人の事情が変わることを完全に防ぐこともできません。

それなら、「キャンセルさせない仕組み」だけを考えるのではなく、来られなくなった人には、できるだけ早く意思表示してもらう。

そして空いた予約枠を、再び使える状態に戻す。

それも予約設計の一部とは言えないか。

良い予約システムとは、予約を取って終わりではなく、予約した後の人の行動まで考えられた仕組みなのかもしれません。

【参考文献】・McLean SM, Booth A, Gee M, et al. “Appointment reminder systems are effective but not optimal: results of a systematic review and evidence synthesis employing realist principles.” Patient Preference and Adherence. 2016.・Robotham D, Satkunanathan S, Reynolds J, et al. “Using digital notifications to improve attendance in clinic: systematic review and meta-analysis.” BMJ Open. 2016.