予約が入っていた時間に、突然キャンセルが出る。
店舗を運営していれば、完全には避けにくい出来事です。
たとえば、明日の14時に1万円の予約が入っていたとします。
その時点では、「明日14時 売上予定1万円」だったものが、前日の夜にキャンセルされれば、「明日14時 売上予定0円」になります。
普通の商品なら、今日売れなくても明日売れるかもしれません。
しかし、「明日の14時」という予約枠は違います。
明日の14時を過ぎれば、もう販売することはできません。
では、突然戻ってきたこの予約枠を、どうすればいいのでしょうか。
minimo「直前割」という一つの答え
この問題に対する興味深い仕組みがあります。
美容師やネイリスト、アイデザイナーなどを直接予約できる「minimo(ミニモ)」が、2025年7月に開始した「直前割」です。
minimoによれば、利用者の中には「急に時間ができたので今日美容室に行きたい」「思い立ったらすぐ予約したい」という需要があり、実際に予約から来店までが当日中というケースが全体の約2割あるといいます。
一方、サロン側には「急なキャンセルで空き枠ができた」「今日の予約枠をすぐに埋めたい」という課題があります。
「直前割」は、この二つをマッチングする仕組みです。
当日の空き枠を通常料金から10%以上割り引いて掲載し、「今日行きたい」利用者へ販売します。
時間が過ぎれば価値がなくなる予約枠なら、価格を下げても利用してもらう。
予約枠の性質を考えれば、合理的な方法です。
その枠を欲しかった人がいたとしたら?
ここでもう一つ、考えてみたいことがあります。
キャンセルによって空いた「明日の14時」を、少し前に予約しようとしていた人はいなかったでしょうか。
予約しようとした、でも、そのときは満席だった。だから別の日時を選んだり、別のお店を探したり、予約そのものを諦めたりした。
予約にはならなかったので、その人の存在は予約表には残りません。
しかし、
「明日の14時なら予約したかった」
という需要は、確かに存在していたかもしれません。
だとすれば、空き枠を埋める方法は、新しい需要を探すことだけではありません。
空いてから需要を探すか、空く前から需要を残すか
ミニモの「直前割」は、
空きが発生する
→ 特別価格で公開する
→ 「今行きたい」新しい需要とつなぐ
という考え方です。
一方、キャンセル待ちは、
予約できなかった人の希望を残しておく
→ 空きが発生する
→ その条件を希望していた人へ知らせる
という考え方です。
言い換えれば、空いてから需要を探すか。空く前から需要を残しておくか。
同じ「突然生まれた空き枠」を扱う方法でも、出発点が違います。
値下げする前に、通常価格で予約したかった人はいなかったか
直前の空き枠を値下げして販売することには意味があります。
何もしなければ売上がゼロになる時間を、もう一度販売できる可能性が生まれるからです。
ただ、その前に考えられることがあります。
その枠を、通常価格でも予約したかった人はいなかったのか。
キャンセル待ちに登録しているのは、もともとその日時やサービスなどの条件で予約したかった人です。
そのため、新しい需要を価格によって生み出すのではなく、すでに存在していた需要へ、もう一度予約の機会を知らせることができます。
キャンセル待ちへ通知しても予約が入らなければ、その後に直前割やSNSなどで新しい需要を探す方法も考えられます。
大切なのは、「キャンセルが出たら、そこから顧客を探し始める」だけが方法ではないということです。
キャンセル対策は、キャンセルが起きる前からできる
少し保険に似た考え方かもしれません。
保険は、事故そのものをなくすものではありません。起きる可能性があることを前提として、起きたときの損失に備えます。
キャンセル待ちも、キャンセルそのものを防ぐ仕組みではありません。もちろん金銭的な補償を行う保険とは異なりますが、
「キャンセルが起きたときのために、その前から準備しておく」
という点では似ています。
より正確に言えば、
将来生まれるかもしれない空き枠に対して、あらかじめ需要を残しておく。
という考え方です。
キャンセル対策というと、キャンセルポリシーを設けたり、リマインドを送ったりして、「キャンセルを減らす」方向を考えがちです。
しかし、キャンセルを完全になくすことが難しいのであれば、
「起きたあと、どうするか」
まで含めて設計する方法もあります。
空きが出たとき、誰に知らせればいいのか
bizstandで開発した「キャンセル待ち通知システム」も、この考え方で見ることができます。
お客様はあらかじめ、
- 希望する日付
- 希望する時間
- 希望するサービス
- 希望する担当者
などを登録しておきます。
店舗でキャンセルなどによる空きが発生したら、その空き条件を入力します。
システムが希望条件と照合し、条件の合うお客様へ空きが出たことを通知します。
その後の予約は、これまで利用していた予約システム、LINE、SNS、電話など、店舗の通常の方法で行います。
つまり、
空きが出てから顧客を探すためのシステムではなく、空きが出たときに声をかけられる需要を、その前から残しておくシステム
とも言えます。
「キャンセルが出た」で終わらせない
キャンセルを完全になくすことは難しいでしょう。考えられるのは、キャンセルを減らすことだけではありません。空いた枠を値下げして、新しい需要へ販売する方法もある。SNSなどで空きを知らせる方法もある。
そして、その枠を以前から欲しがっていた人へ知らせる方法もある。
キャンセルが出てから、「この空き枠をどうしよう」と考え始める。
それだけではなく、
「空きが出たら、誰に知らせればいいのか」を、その前から準備しておく。
予約キャンセルによる売上機会の損失には、そんな備え方もあるのだと思います。
