キャンセル待ちというと、どんな状態を想像するでしょうか。

  1. 希望する日時が埋まっている
  2. 予約を取らずに、キャンセルが出るのを待つ

そんな仕組みを思い浮かべるかもしれません。

しかし、キャンセル待ちにはもう一つの使い方があります。

すでに予約は取れている。ただ、本当に希望していたのはもっと早い日時だった。

そのため、

「いまの予約は残しておいて、もっと早い日時が空いたら知らせてほしい」

という需要です。

予約が取れた日時と、希望する日時は同じとは限らない

米国の医療機関では、この需要に対応する「自動キャンセル待ちリスト」が実際に利用されています。

2026年にJournal of Medical Internet Researchに発表された研究では、米国127の医療システムを対象に、自動キャンセル待ちリストの運用状況が調査されています。

そのうち90の医療システムが、自動キャンセル待ちリストの利用データを報告していました。

仕組みはシンプルです。

患者は通常の予約を確保したまま、より早い予約枠が空いた場合に通知を受けます。条件が合えば予約を変更する。合わなければ、もとの予約をそのまま残す。

つまり、「予約するか、キャンセル待ちするか」の二者択一ではありません。

予約を確保したうえで、より希望に近い日時が空くのを待つことができます。

空き枠の25%が、実際に予約された

では、本当にそのような需要があるのでしょうか。

同研究で利用データを報告した90の医療システムでは、自動キャンセル待ちリストから提示された空き枠が実際に予約された割合の中央値は25.0%でした。

さらに、キャンセル待ちリストの運用成績が高かった10の医療システムでは38.8%でした。

すべての通知に患者が応じるわけではありません。それでも、空きが出たことを知らせれば、そこへ移りたい人が実際に一定数存在している。

予約がすでに埋まっているからといって、予約需要まで満たされているとは限らないことが分かります。

事業者にとっても、単なるサービス向上ではない

この仕組みには、予約を利用する側だけでなく、予約を受ける事業者にもメリットがあります。

たとえば、Aさんが11月20日に予約しているとします。

本当はもっと早く予約したかったのですが、空いていなかったため11月20日を予約しました。その後、11月5日にキャンセルが出ます。Aさんへ空きを知らせ、11月5日へ予約を変更してもらう。

すると、11月5日の空きが埋まる、だけではありません。

Aさんが予約していた11月20日の枠が、新しく空きます。

つまり、「直前に発生した売りにくい空き枠」を埋めながら、「まだ販売する時間が残っている将来の予約枠」をもう一度空き枠として戻すことができます。

予約枠を、より使いやすい場所へ動かす

キャンセルなどによって生まれ、そのままでは使われなかった可能性のある予約枠を利用できる。

さらに、前倒しされた患者が持っていた元の予約枠が解放され、別の患者が利用できるようになります。

運用成績の高かった10の医療システムでは、自動キャンセル待ちリストによって変更された予約は、もとの予約より中央値で36日早くなっていました。

もとの予約は44日先。変更後の予約は8日先でした。

患者にとっては、希望していた早い予約を利用できる。

事業者にとっては、直近の空きを利用しながら、44日先にあった予約枠を再び提供できる。

単なる「キャンセルの穴埋め」とは、少し違った効果が生まれます。

無断で来ない人も少なかった

もう一つ、興味深い結果があります。

運用成績の高かった10の医療システムでは、自動キャンセル待ちリスト経由で取られた予約のうち、患者が来院せず事前連絡もなかった割合は中央値3.1%でした。

全予約では6.6%でした。

ただし、この数字から「キャンセル待ち通知によって無断キャンセルが減る」と結論づけることはできません。

もともと早い予約を希望していた人ほど来院意欲が高い、といった違いが影響している可能性もあります。

それでも、「空いたから誰かを探す」のではなく、

「その枠を希望している人へ知らせる」

という予約の動かし方には、事業者側にも意味がありそうです。

キャンセル待ちは、「予約できなかった人」のためだけではない

キャンセル待ちを、「予約が取れなかった人が、空くまで待つ仕組み」と考えると、利用する人は限られているように見えます。

しかし、

「予約は確保しておき、もっと希望に近い枠が空いたら知らせてもらう仕組み」

と考えると、その意味は少し変わります。

予約が取れていることと、希望する日時に予約できていることは、必ずしも同じではありません。

そして、その差を残しておくことは事業者にとっても意味があります。

キャンセルによって突然生まれた空き枠を、すでにその時間を希望している人へ知らせる。

その人が予約を移せば、今度は将来の予約枠が空く。

キャンセル待ちは、単に空いた予約を埋める仕組みではなく、「どの時間なら予約したいか」という需要を残しておき、空いた予約枠をより有効に使うための仕組み

と考えることもできそうです。

参考:Woodcock E, Profeta C, Siegel M. Automated Waitlists for Ambulatory Appointment Scheduling: Multisite, Mixed Methods Evaluation. Journal of Medical Internet Research. 2026;28:e90091.