「お友だちを紹介すると、紹介した方にも、紹介された方にも500円OFF」

店舗やサービスで、こうした紹介キャンペーンを見かけることがあります。

では、このキャンペーンには終了日を設けた方がよいのでしょうか。

期間を区切れば、特典にかかる費用を一定期間に限定できます。

一方で、紹介という行動には少し特殊なところがあります。

紹介したい相手が現れるタイミングを、事業者側では決められないことです。

紹介したい相手は、いつ現れるのか

たとえば美容室を利用したお客様が、友人との会話の中で、「どこの美容室に行っているの?」と聞かれたとします。

その瞬間に、「そういえば紹介特典があったな」と思い出すかもしれません。

ところが、そのときには紹介キャンペーンが終了していた。

もちろん、特典がなくても紹介してくれる人はいるでしょう。

それでも、「紹介したい」と思うタイミングと、店舗が設定したキャンペーン期間が一致するとは限りません。

そう考えると、紹介制度は期間限定にするより、いつでも利用できるようにしておいた方が合理的にも思えます。

「いつでも紹介できる」という意味

紹介制度を常設する意味は、いつも積極的に紹介を求め続けることだけではありません。

誰かに紹介したいと思ったとき、「そういえば、紹介できる仕組みがあった」と利用できる状態を残しておくことにも意味があります。

紹介する相手がいないときに、いくら「紹介してください」と呼びかけても、紹介は起こりません。

反対に、紹介したい相手が現れたときに仕組みがなければ、その機会を逃す可能性があります。

紹介が生まれるタイミングを事業者側で決められないのであれば、「いつでも紹介できる」という常設型には、それなりの合理性があります。

では、なぜ終了日を設けるのか

一方で、紹介制度は常設すればよい、と単純に決められるものでもありません。

終了日を設けることには、特典費用を一定期間に限定する以外の意味もあります。

「今月末まで」「先着○名まで」といった限定性です。

紹介特典と限定性の関係を調べた研究では、期間や数量に限定性を持たせることで、紹介意向が高まる可能性が示されています。

つまり、「いつでも紹介できます」という制度と、「今月末まで特典が増えます」という制度では、後者には「今紹介する理由」が加わります。

紹介できる状態を用意することと、紹介する行動を促すことは、少し違うわけです。

特典を付ければ付けるほど、紹介されるわけでもない

さらに、紹介特典については興味深い研究があります。

もともと自然に紹介したいという意欲が高い商品やサービスでは、紹介特典を提示することで、かえって紹介意向が低下する場合があることが報告されています。

「これは良かったから、誰かに教えたい」

という行動に、

「特典が欲しいから紹介している」

という別の意味が加わってしまうためです。

もちろん、紹介特典そのものが悪いわけではありません。紹介特典によって紹介行動が促される研究もあります。

ただ、「特典を大きくすれば、それだけ紹介が増える」というほど単純ではなさそうです。

紹介は、商品を値引きして販売することとは少し違います。

人から人へ何かを勧める行動だからこそ、特典の金額だけでなく、紹介する理由やタイミングも関係してきます。

常設か、期間限定か。本当に二者択一なのか

ここまで考えると、常設と期間限定をどちらか一方に決める必要もないことが分かります。

たとえば、通常時は「紹介成立で、紹介した方・紹介された方ともに500円OFF」という制度を常設しておく。

そして集客を強化したい時期だけ、「今月は双方1,000円OFF」と特典を増やす。

通常時には、偶然生まれた紹介の機会を逃さない。

キャンペーン期間には、期限と特典によって「今紹介する」という行動を促す。

実際に、通常の紹介制度を維持しながら、期間限定で紹介特典を変更・強化する企業もあります。

常設と期間限定は、必ずしも対立する選択肢ではありません。

紹介制度に、何を期待するのか

では、紹介キャンペーンに終了日は必要なのでしょうか。

重要なのは、「常設と期間限定のどちらが優れているか」ではなく、紹介制度に何を期待しているのかだと思います。

紹介したいと思ったときに、いつでも紹介できる状態を用意しておきたい。

それなら、常設することには合理性があります。

紹介を増やしたい時期に、「今紹介しよう」という行動を促したい。

それなら、期間を限定することにも意味があります。

そして、その両方を目的とするなら、通常の紹介制度を常設しながら、必要な時期だけ特典を強化する方法もあります。

紹介したい相手が現れるタイミングを、事業者が決めることはできません。

一方で、「今紹介しよう」と思うきっかけを、事業者側からつくることはできます。

紹介する機会を残すことと、紹介する理由をつくること。

紹介キャンペーンの終了日を決める前に、まず考えたいのは、そのどちらを目的としているのか、なのかもしれません。

【参考】・Referral reward programs with scarcity messages on bank credit card adoption / International Journal of Bank Marketing, 2019・How scarcity and thinking styles boost referral effectiveness / Psychology & Marketing, 2021・Unintended reward costs: the effectiveness of customer referral reward programs for innovative products and services / Journal of the Academy of Marketing Science, 2019